日本放射線腫瘍学会

第43回放射線による制癌シンポジウム
第52回生物部会学術大会

開催会場

メルパルク京都
〒600-8216
京都府京都市下京区東洞院通
七条下ル東塩小路町676番13

事務局

第43回制癌シンポジウム・
第52回生物部会学術大会
事務局
奈良県立医科大学
放射線腫瘍医学講座
〒634-8522
奈良県橿原市四条町840
TEL:0744-29-8908
FAX:0744-25-3434

大会長挨拶

日本放射線腫瘍学会
第43回放射線による制癌シンポジウム 第52回生物部会学術大会
世話人・大会長
奈良県立医科大学 放射線腫瘍医学講座
長谷川正俊

半世紀前の1964年は、夢の超特急と言われた東海道新幹線が開通し、アジアで初めての東京オリンピックが開催された年で、当時、小学校2年生だった私にも時代の大きな流れが感じられました。この度、制癌シンポジウム・生物部会の「生物部会50周年記念大会」を開催させていただくにあたり、生物部会が初めて開催されたのがこのオリンピックの年であったこと、そして生物部会には現在の親学会である放射線腫瘍学会の2倍近い歴史があること(以前は日本医学放射線学会生物部会)を再認識して、その責任の重さを痛感しています。

第一回は東北大学で栗冠先生が開催されたとのことです。今回は、当時の十数名の出席者のおひとりであった坂本澄彦先生(東北大学名誉教授)に特別講演をお願いいたしました。坂本先生は非常にご高名ですので皆様よくご存知と思いますが、「Bright Radiologistの会」の主要メンバーでもありました。こちらの会は知らないという先生が多いかもしれませんが、頭部が光り輝くようにならないと、橋本省三先生、加納永一先生、坂本澄彦先生のような一流の研究者にはなれないということなのでしょうか。(同会からは1990年代にハエトマール スベールという本も発刊されていました。)

開業当時の新幹線0系では東京~新大阪間の所要時間が3時間10分でした。従来の約半分のという驚異的な速さでしたが、現在の新幹線N700系では最短2時間25分です。この50年間では45分しか短縮できなかったという印象もありますが、新幹線は最初から完成度が非常に高かっただけに、さらに45分も速くなったというべきかもしれません。

さて、それでは、放射線生物学や癌治療はどうでしょうか。分子生物学の進歩が目覚ましく、遺伝子レベルの放射線生物学や腫瘍学の研究が急速に発展しました。癌治療においても50年前には想像もできなかったような進歩があり、手術や化学療法、分子標的治療等が発展しましたが、特に放射線療法においては、かつてのテレコバルトでは考えられないレベルの高精度放射線治療が可能となり、治療成績も大きく改善しました。これらの進歩は新幹線の50年間よりもはるかに大きいのではないでしょうか。

放射線生物学、放射線腫瘍学が急速に発展したことに異議を唱える人はほとんどいないと思われます。ただし、ここで気をつける必要があるのは、鉄道が蒸気機関車から特急列車、新幹線に発展してきた歴史と、生物学や腫瘍学の歴史は必ずしも同様ではないということです。例えば、どんなに分子生物学が進歩して遺伝子レベルの解明が進んでも、それ以前の放射線生物学が根本的に変わるようなことはほとんどなく、現在でも大部分がそのまま通用するということです。臨床応用の段階になるとむしろ古典的な生物学レベルの議論の方が現実的に有用なことも珍しくありません。従って、放射線生物学とその臨床応用には、長い歴史から学ぶことも非常に多く、その上で新たな研究を発展させていくことが重要と考えます。

今回のテーマは、「放射線生物学における温故知新“50年の歴史から最先端治療へ”」とさせていただきました。この節目に今後の研究の発展や治療成績の向上につながるような成果が少しでも得られれば幸いです。よろしくお願い申し上げます。

▲ Top